2008年南米ペルーを訪れた際、アヤワスカを体験した時の記録です。
も く じ
アヤワスカとは
アヤワスカはアマゾンにおける伝統的医学として、あるいは、宗教的実践のために用いられてきた、精神に作用する植物のお茶である。 アヤワスカという呼び方はケチュア語で「魂のつる」「死者のロープ」という意味をもつ。 ペルーの国家文化遺産。 |
出会い
日本に居る時から、ネットでアヤワスカという名前を知っていた。
多分、誰か他の旅人のブログで知ったと記憶している。
当時アヤワスカに対してはそんなに強い思い入れはなく、南米を旅行中にもし縁があったら飲んでみたいという程度の思いだった。
時は2008年、場所は南米ペルーの首都リマにある日本人宿、ペンション「オキナワ」。
リマの町の中心にあって、3~4階建ての小振りなビルで沖縄出身のおじいさんがオーナー。宿のTVからNHKが流れていて、日本では毒物入り餃子の話題でもちきりだった。
偶然にも、そこで日本人バックパッカーが残していった情報ノートに、かなりたくさんのアヤワスカに関する情報を見つけた。
ペルーのアンデス山脈を越えた奥地、アマゾン川の源流にあるサンフランシスコ村にアヤワスカをセレモニーを受けられるスイピーノという施設があり、有名なシャーマンであるロヘルさんが居るという。
みんな結構経験していて、詳細な情報も載っていた。
お声がかかった。
「縁」があちらの方からやってきた。
初めての場所に飛び込む時、いつも感じる大きな不安と期待。
これは行くしかないと思った。
以下、当時の日記から。
2008年2月1日 プカルパへの移動
朝7時起床、日記を付ける。日本の人と一緒にジャガイモの油揚げを食べに行く。モチモチしていておいしい。
昼過ぎまでひたすら日記をつける。
本屋さんの息子さん(日本人旅行者)とのお話。楽しい。いろいろな人との出会い。
朝方宿に戻った時、ちょうど若い日本人カップルと入り口で会った。どうやら、これから自分が行こうと思っているサンフランシスコ村でアヤワスカを飲んできたらしい。
女性の方は少し美しい光などが見えたらしい。男性の方は特に何も見えず、しかも体調を崩し一週間プカルパの宿で寝込んでしまっていたらしい。
アヤワスカはうまくいく人と、うまくいかない人の両方いるらしい。
昼1時、要らない荷物を宿に預けてチェックアウト。
マクドを見つけ高いコーヒーとポテトを買って「さあ無線LANでネットだ!」と思ったら、電波が飛んでない。早々に店を出て、おとなしくネットカフェに入ってネットをする。
夕方5時、宿に戻って荷造り。
【ペンションオキナワ】
ペンションオキナワのオーナーのおじさんと少しお話。とても親切な方で、何でこの宿を悪く言う人が居るのか分からない。(ネットに悪い評判が載っていた)
日本の戦後から東京オリンピックまでのとても貧しかった時期に、たくさんの日本人が海外に移住していった事を知った。オーナーの方は50年ペルー在住だそうだ。沖縄なまりが未だにあった。
宿を出て、バス会社が集まっている地区までバスで行く。バスの運ちゃんも、客の呼び込みのおばさんも、とても親切に目的地の降りる場所を教えてくれた。どうにかプカルパ行きのバス会社を発見。
目的地のサンフランシスコ村には、
リマ→→→プカルパ→→→ヤリーナコチャ→→→サンフランシスコ村
という具合に移動する。
今日は暑い。。19:15出発。安いバスだったので、古くて汚い。
2月南米では、水かけ祭りをやっているらしく、バスに乗っていると、突然水風船が飛んでくる。みんな一斉に窓を閉める。
このバスの運転荒い。しかもアンデス山脈を越えるので道が曲がりくねっている。上の棚から荷物が降ってくるわ、ペットボトルが降ってくるわで大変。隣は太った大きなお兄さんだったので、ギュウギュウで大変。
標高の高い所を走るので、夜はめちゃくちゃ寒い。しかも頭が非常に痒い。かなり最悪のコンディション。
なぜか夜にアルコールをしませた脱脂綿がみんなに配られる。使い方が全く分からず、頭にこすりつけると、だいぶん痒みが和らいだ。
このバスはなかなかトイレ休憩で停まってくれない。ひたすら走り続ける。あかん。ドロドロや。久々にヒドイ状態。。
2008年2月2日 アヤワスカを体験する
次の日、、まだまだバスは走り続ける。
途中、橋の工事中の所があり大渋滞。大雨が降るとすぐに橋が崩れてしまうらしい。
【大雨で足止め】
どこから情報を仕入れてくるのか、アイスクリームやポテトの物売りの人々がワラワラとやってくる。
昼2時頃、やっと今日初めての食事休憩。イモのような太いバナナ煮と米を固めた食べ物をたべる。
同じテーブルのおじさんが話しかけてきた。子供達にボクシングを教えていて、プカルパからサンフランシスコ村の途中にあるヤリーナコチャという町に住んでいるらしい。ぜひ家に来て欲しいと、住所を教えてもらう。すごく感じの良い人。
バス出発。しばらく走ってタイヤがパンク。ええかげんにせんかい。
【パンクを修理】
隣の太ったお兄さんは荷物を持って通りがかりの車をヒッチして、さっさと先に行ってしまった。
さらにしばらく走って、ようやくプカルパ着。
着いたとたん、一気にバイタクの人々に取り囲まれる。3ソル(1ソル約30円)でヤリーナコチャまで行ってくれるというおっちゃんのバイクに乗り、ヤリーナコチャの目当ての宿まで。料金の支払いで4ソルしか無く、仕方なく渡すと、案の定お釣りは無いとゴネる。ホントもうええわ。
宿にチェックイン。長いこと放置されてる様な埃っぽい部屋で気持ち悪い。まあ、一泊なんでガマンやな。
明日はサンフランシスコ村に行かないといけないので、すぐに準備。サンフランシスコ村は虫が多いらしい。そして食べ物は自分で持ち込まないといけない。
村行きのボートは朝7時からしか出てないので、今日中に全部の用事を済ませる必要がある。すぐに外出して村行きのボート乗り場を探す。
船着き場の前に店がたくさんあったので、そこでライターと蚊取り線香、虫除け薬を買う。食料用の果物を買って一安心。明日に備えて、やることはやった。
今日知り合ったおじさんの家に行く約束をしていたので、人に道を聞きながら、おじさん宅に向かうが、疲れていたので、そこら辺のバイタクの人をつかまえたら、偶然にもそのおじさんの兄弟らしい。家まで送ってもらう。
何と質素な家か・・・。
正直、こんな所に居て良いのだろうか?と思うぐらい場違いな自分。家の床は剥きだしの土。木で作られ傾いたベッド。布団、シーツ、一切無し。椅子も手作り。古い小さなTVから、現地のお笑い番組が流れている。
レモンジュースをいただき、みんなの家族写真をとってあげる。たくさんの子供がいた。
【おじさん家族の写真】
アヤワスカをやりに、明日サンフランシスコ村に行くと告げると、友達にシャーマンが居るからと言われ、少し待つ。
小柄でガッチリした男性が来る。エルネストというその男性は、サンフランシスコ村のシャーマンで有名なロヘルさんの従兄弟らしい。
どうだ、今日すぐにでもアヤワスカのセレモニーができる。やるか?と言われ、少し迷う。何の心の準備も出来てない・・・。
少し考えたが、考えても仕方ないのでお願いすることにする。
自分は一人や。この人達は、ここに住んでいるので、何も悪い事は起こらないだろう。住所も知っている。
もし、セレモニーがうまくいかなくても、明日、サンフランシスコ村に行って、ちゃんとやってもらえば良いと考えた。
リマの日本人宿「オキナワ」で読んだ情報ノートには、信頼のおけるシャーマンに頼んだ方が良いとあったが、その時は酒を一緒に飲むぐらいの軽い感覚だった。
バスで知り合ったおじさんの家の隣がエルネストの家で、そこで彼の家族と少し話しをしたり、写真をとったりした。家の娘さん達がカメラを覗き込む。ピッタリと引っ付いてきてびっくりした。ドキドキするなあ。
その後、水シャワーを浴びさせてもらい、手作りの頼りない階段を登って二階の部屋へ。何もないガランとした部屋。
異様だ、何もない。薄暗く異様に広い部屋。
壁際にマットレスが一枚敷いてあって、汚いカバーのかかった枕。そしてイノシシの毛皮らしきものが壁にかかっている。奥にタンスと、手前に棚以外は何もない。
【マットレス】
壁の上の方は大きく空いていて、外の外灯が見え、前の通りのバイタクのボボボボという音がそのまま入ってくる。ホコリを被った屋根裏みたい。
少し後悔した。大丈夫か??
しばらくその部屋で待つ。なぜかゲロの匂い。どこからか漂ってくる。
いつの間にか寝てしまっていた。
しばらくしてエルネストが入ってくる。茶色いドロ水の様な液体の入ったペットボトルが2本、タバコ1箱、バケツ。それのみ。
まず、お金の話しをする。最初は30ソルとか言っていたのに、今になって50ソルだと言う。とりあえず100ソルを渡すと、両替してくる、と出て行った。
戻ってくると、27ソルしか戻さない。何なんだ?この人。しばらくお互いゴネ合って、50ソルで決着。※50ソルは当時のレートで約1500円
何だか信用できんな~~~。大丈夫か??そこら辺の悪徳商人とかわらんではないか。
彼の従兄弟であるロヘルさんの事を悪く言いよるし。シャーマンとして成功している彼に対する嫉妬がすごい。
あまり良くない雰囲気。よくないな~。まあ、ここまで来たんや。ダメやったら明日、ロヘルさんの所でやり直してもらおう。
時間は良く分からないが、夜の8時か9時頃から始まったように思う。
自分はマットレスの上に座り、向かい合わせでエルネストが胡座をかいて座る。
アヤワスカ入りのペットボトルに口を近づけて、歯の間からスィースィーと口笛を吹く。
「集中しなさい。集中しなさい。」
銀色のコップにアヤワスカをほんの少し(30ccぐらい)入れてくれる。
「集中して、念を入れなさい。」
しばらく見つめて一気に飲み干す。少しジャリジャリが入っていて苦い。まずい。しかし吐き出す程ではない。
効果が出るのに15分かかると言われる。
彼も同じようにアヤワスカを飲み、そしてタバコをふかし始める。勧められたので、人生2本目のタバコを吸う。
しばらくして彼が歌い始める。何事も起こらない。
彼の唄に合わせて、体を揺すってみたりしたが、だめだ。
「見えたか?」
「いや、何も変わらない」
彼は少し考え、2杯目ついでくれた。それも飲み干す。
何も変化が無いな。アヤワスカを吸収しようと腹にグイグイ力を入れてみる。唄に合わせて体を揺する。
目を閉じてみる。
瞼の裏に鮮明に変な模様が動いているなあ・・・。塩の結晶か水晶のような幾何学模様がジワジワと動いている。
この程度なのか??
そして胡座をかいた自分の足がブルブルと動く。でも、これは床が揺れているので、唄を歌う彼の動きが直接自分に伝わっただけだろうな。
しかし、ここら辺から意識がハッキリしなくなる。
気が付くと、エルネストが何度も何度もバケツに向かってゲロを吐いている。苦しそう。唄を歌い、吐く。
何だ。自分は1回も吐いてないのに、何だか弱い人だなあと思った。後で考えると、それだけ反応の良い体なんだろうな。早くその世界に入っていける・・・。
電灯は消されていて部屋の中は真っ暗だ。
その時急に誰かが扉を開けて部屋に入ってきた!え!?誰だ?他に人が来るなんて話は聞いてない!!
その男が部屋に入ってきた瞬間、世界が変わった。
万華鏡か水晶か。彼らも水晶、部屋の空気、空間も水晶。
まるで部屋の中一杯に、ぐちゃぐちゃにかき回したゼリーを大量に注ぎ込んでしまった様な見え方。色々な色の光がブレて動く。
動くごとに空間の水晶も動き、動きの軌跡が残ってゆく。動きの連続写真を1枚に合成したような・・・。
ピカソの絵だな。キュビズムの絵だ。あれの実物が目の前に展開されている。
【後で描いた絵。タミオー日記vol.3に収録】
彼らの話し声、音が見えた。
ある時は絵の具をビチャと散らしたように音が見えたり、目の前を小さな水晶のカケラが尾を引きながら通り過ぎるように見えたりした。
音に触る事が出来そうな感じ。脳の感覚認識部分が完全に混乱している。
エルネストは何度も何度も吐く。入ってきた男の心配そうな気配が伝わってくる。エルネストは唄を歌い、吐く。
どのくらいの時間がたったか分からないが、気が付くと、喉の奥から黒いナイフの様な物が押し上がってくる。
耐えるとエルネストの唄が、またその黒いナイフを引っ張り出そうとする。
もうここら辺から、自分の体と心が完全にエルネストの唄に引きずられる様になってしまっていた。
唄と完全にシンクロしている。
吐き気を抑えようと耐えると目の前に光りの世界が広がり、ググっとまた黒い物が上がってくると現実に引き戻される感じ。
そしてまた気が付くと、目の前にバケツがあって、舌を思いっきり出して、腹の中の物を吐き出そうとしている自分に気が付く。カッカッカッと吐き出そうとしているが、なかなか出てこない。
フッと横に気配を感じ、見ると、さっき入ってきた男の人が、自分の口に指を突っ込むゼスチャー。ああ、そうか、と自分の指を突っ込んでみる。周りが光に包まれて、ブワーっとバケツに流れ込んでゆく。
光の洪水だ。全てが激しい光で満ちている。
何回か吐いた。まだ出したくて出したくて仕方がない。指を思いっきり、これ以上入らないぐらいに、喉に突っ込んでいる。
気分が悪いから吐く、頭が痛いから吐く、という感覚を越えた、頭で考えて吐くんじゃ無しに、体そのものが拒絶反応を起こしているような感じだ。
これはある意味、猛毒か。こりゃかなり効くわ。顔中から、汗と涙と鼻水と唾液がどんどん出てはバケツに落ちてゆく。
親指と人差し指で眉間を掴むと、指がズブズブと入ってゆき、頭と溶け込んで、バケツの中へドロドロと流れ込んでゆく。
【後で描いた絵。タミオー日記vol.3に収録】
エルネストが気合いを入れ直しているのが見える。彼にとっても相当大変な作業なのかも知れない。
バケツに吐いている時、家族全員の顔が浮かんだ。それも光の渦の中に溶け込んでしまった。家族に対して非常に感謝の念に打たれて、泣いた。
その間も、ものすごい勢いで光は流れている。
うなだれ、自分の胡座をかいた体を見下ろす。自分の体がすごく巨大に感じる。足まで100メートルぐらいはありそう。ははは、こりゃかなりキてるわ。
体からアヤワスカを引っ張り出そうとエルネストの唄は続く。助手の男の人が自分の腹を手のひらでグイグイ押して、吐き出させようとする。もう、あかんよ、水しか出ない。
突然、暗闇の中から両手がフッと目の前に出てきて、自分の頭を両側から包み、頭にタバコの煙をフワッと吹きかける。これがなかなか気持ちいい。
皮膚感覚が無いので、透明でカラッポな自分の頭に煙を吹き入れられている感じがする。
はっきりいってグタグタだ。いいように、シャーマンの為すがままという感じが少し悔しい気がした。
寝かされ、体に手をかざす。頭を両手で包み込み、上へ抜く。感覚が普通の状態であれば、何のことはない、ただの仕草なのだが、体が透明なので、その動きが、彼の両手が、自分の体の内部にまで入り込んでくる感じがする。
こちらの状態を見つつ歌ったり、電灯を点けたり消したり、こんなに大変な作業なのか!まさに手術の様だ。
後半はエルネストが歌うたびに、涙がどんどん出てきた。そして、収まる。また唄が聞こえてくると泣いた。
むせび泣いた。
どっかのTVで見た、アヤシイ宗教のいっちゃってる信者そのものになっていた。
これはすごいわ。完全に唄とシンクロしてしまっている。シャーマンは船頭さんの役目か。何度も何度も歌ってくれる。
もういいよ。自分は素に戻った。そこまで歌ってくれなくてもいい。その丁寧なシャーマンぶりに感動し、また涙。
何度か名前を呼ばれたり、足の裏をつつかれたりして、反応を確かめられた。
皮膚感覚が、体の感覚が戻って来るように、自分で体をバシバシと叩いた。顔もバシバシ叩くと、バシバシバシバシバシと止まらなくなってしまった。
座らせられたり寝かされたり、段々アヤワスカが抜けてきた。
唄が静かになり、セレモニーはフェードアウトするようにゆっくり終わった。
自分は柔らかい光に包まれた海の中にいる。
いるというか、海の一部だ。懐かしい感じ。
海面の方に強い光が見える。あれが唄だ。
唄が海中から自分を引っ張り上げてくれる。
最後までキッチリと面倒を見てくれたエルネストと助手の男性に感謝した。
シャーマンの存在、役割を初めて知った。
彼らが居なかったら、ただ単に、吐いたり、トリップしたり、何処に行ってしまうかわからない。しかし彼らが自分を安全に着地させてくれる。
夜3:30頃終了か。それからしばらくボーと天井を見上げていた。脱力。頭はとてもクリアー。全然眠くない。
エルネストと助手の男性はしばらく話をしていたが、そのうち静かになった。
何だったのだろうか?全てをさらけ出され、マットレスの上に横たわっている。自分の全てを人に見られた気がして、少し恥ずかしかった。でも、素晴らしい体験だった事は確かだ。
雨が降り出した。トタン屋根に当たって大きな音がする。ザーーーー。
1時間ぐらい天井を見上げて今までの出来事を考える。
二人はまだ部屋にいる。電灯を点けてもらう。
素晴らしかった。本当に素晴らしかった。そして、シャーマン、エルネストと助手の男性も素晴らしかった。
彼らと、今後の事について少し話す。彼らは、もっとシャーマンとしての仕事をしたいようだったので、リマの日本人宿に戻ったら、彼らの事を紹介するという約束をする。ただし、お金に執着し過ぎないよう、釘を刺した。
自分に起こった経験を彼らと話す。エルネストはその感想にとても満足しているようだった。
自分の中でアヤワスカは終わったと思った。
これから先、あと何回アヤワスカを飲んだとしても、今回の様に素晴らしい経験が出来るとは思えなかった。
すぐにリマに戻りたくなった。その位、素晴らしかった。
その助手の男性はエルネストの弟だった。お互いに今回のセレモニーで起きた出来事について質問し合った。
皆、とても満足していた。最後は握手をして、二人は部屋を出て行く。
【エルネストとその弟さん。手前にアヤワスカの入ったペットボトルとタバコが写っている。】
一人、部屋で今までの事を思い出してはメモする。体も、とてもスッキリしていて、気持ちがいい。内臓の辺りがとてもホカホカしている。まるで心も体も赤ん坊になって産まれてきたばかりの様だ。
なぜか、とても暖かく、懐かしいものに触れた気がした。
電灯に照らされた部屋を見ると、床に飛び散った汗、水、ゲロのシミが生々しく残る。そう、本当に治療の跡、何かが産まれた跡が残った部屋だ。
こんなになるとは思ってなかった。こんなおおごとになるとは思ってなかった・・・。
アヤワスカのセレモニーは想像以上に精神と肉体の限界まで探ってゆく行為だった。
そのセレモニーの後、自分に何か劇的な変化が起こったか?というと、特に変わってないように思える。
ただ、そういう世界が存在するという事は体感できたと思う。
2008年2月3日 その後、サンフランシスコ村へ
アヤワスカのセレモニーは終わったが、シャーマンで有名なロヘルさんに一目会ってこの地を去ろうと思った。会ってみたかった。
ここまで来て、サンフランシスコ村を見ずには帰れないと思ったので、明るくなるまで待って、家のおばさんに挨拶をして出る。エルネストは外出していて居なかった。
前日にチェックインして、荷物だけを置いてきてしまっていた宿に戻って、荷造りをして、すぐにチェックアウト。
宿近くにある船着き場で、サンフランシスコ村行きの12~15人乗り用の屋根付きの長いボートに乗り込む。お客で一杯になるのを待って、ボート出発。
【ヤリーナコチャのボート乗り場】
まだ頭がぼ~~としている。ボートが止まり、途中で人を降ろす。水上の家だ。
その家の横で、おじさんが広げた網をたぐり寄せ、漁をしていた。ピラニアもとれていた。ピラニアは、まず、ボートのオールでど突いて殺してから、川に捨てていた。どうやら食べられないらしい・・・。
1時間後にサンフランシスコ村に到着。人通りは少ないが、質素な作りの家がいくつか見える。結構人が住んでいるみたい。
【桟橋の向こう側にサンフランシスコ村がある】
村の人に聞きながらロヘルさんの居るSuipino(スイピーノ)という宿へ。村の人がわざわざ案内してくれた。かなり村の奥の方にある。
残念ながら、ロヘルさんはリマに行っているらしく、会えなかった。施設の世話役の兄弟(いとこ?)の男性とお話をする。
スイピーノというのは、宿の名前ではなく、そのエリア(施設)の名前だった。
スイピーノには、宿泊所が3つ、セレモニーに使用する舞台が1つ、ロヘルさんの家が1つ。炊事場所が2カ所ある。森に囲まれた結構広い場所。とても静かで、とても良い環境だ。ロヘルさんがすぐれたシャーマンであるというのも頷けた。
【スイピーノの宿泊所】
【セレモニーの舞台】
今、この施設に日本人が5人居る。その内の1人、女性の娘さん、6才がやってきて挨拶をする。初対面の人を全く恐れない。好奇心旺盛な女の子だった。
せっかくここに来たので、自分はインタビュアーのごとく滞在中の日本の人、一人一人と話をする。
体の治療で来ている人もいるし、シャーマンの勉強をするために居るという人も居た。その人は1年以上もここに滞在しているみたい・・・すごい。
その人は顔色が悪く、目の周りが黒ずんでいるのが気になった。まるで、シンドバッドとかの物語に出てくる魔法使いのようだった。
その後、娘さんとお絵かきなどして遊ぶ。
遊んでいると、急に疲れが出てきてグッタリとなってしまう。汗が出て、さらにツバがどんどん出てくる。やばい。トイレに駆け込み吐いた。大量の汗。はじめ水しか出てこなくて、その後、薄茶色の液体が出てきた。
この時、アヤワスカが完全に体から出てしまったのだなと思った。覚えていたはずのシャーマンの唄も同時に忘れてしまった・・・。
すぐにでもリマに戻りたかったが、この疲れでは今日は無理だ。今日一晩、泊めてもらうことにする。しばらく屋根付きの風通しの良い舞台で寝る。
食べかけのパンに、あっという間にアリがたかってしまって食べられなくなってしまった。さすがアマゾン。虫の勢いが、町とは全然違う。
準備してもらった部屋は蚊帳がちゃんとある。部屋でしばらく寝る。天井や壁はあるが、天井と壁の間が開いている。窓もガラスが入っておらず網戸のみ。
とても心地よい場所。昨日の嵐の様な経験の後の、この心地よさ。出来過ぎているよなあ・・・。
外から娘さんに「お兄さん~~絵描こうよう」と誘われて、外で地元の子供たちと一緒にお絵描き。
【娘さんと子供達】
もう体の調子は大丈夫やな。元に戻った感じがする。地元の子供達もとてもかわいらしい。疲れたので部屋に戻ると雨が降り出した。
天井と壁の間は何も無いので、同じ建物の別の部屋にいる娘さんとお母さんの話し声が普通に聞こえてくる。楽しい話し声。
2時間ぐらいボ~~と考え事。昨日の出来事は一体何だったのだろうと、ひたすら思い出そうと努力する。電気が来てないのでやる事が無い。
しばらくしたら男性がロウソクを持ってきてくれた。パソコン広げて写真の整理をする。夜7時頃寝てしまう。
2008年2月4日 リマへ戻る
夜中、目が覚める。外はかなり雨が降っている。
テーブルの上に置いてあった果物を入れたビニールが、さっきからガサゴソと音を立てている。
おお!この野郎。また俺の食料を横取りするつもりか?と、蚊帳から出たとたん、蚊の大群に襲われる。
ジャングルの虫達は、かなりどう猛や。あっという間に足に5匹以上もとまっている。手で払おうとすると、潰れて血がベトー。す、すごい。何なのだおまえ達は・・・。
トイレにも行きたかったが、蚊でもっと大変な事になりそうだったので、ガマンして朝まで寝る。
朝6:30起床。準備をして、お母さん、娘さん、男性に挨拶をして施設を出る。
「また戻ってくるんだよ~~。」と遠くの方に小さく見える娘さんが叫ぶ。ええ子やなあ。
行きは通れた小さな木の橋が昨日の雨で水没していたので、地元の女性が回り道を案内してくれた。
船着き場でボートに乗り、30分ぐらい待って出発。左右をジャングルに囲まれた川をボートは進む。
雲の向こうに太陽が隠れていて、雲の輪郭がオレンジ色にはっきり見えて美しい。川面に空や雲がうねって映る。ユラユラと映って光る。
ああ、同じだと思った。アヤワスカを飲んだ時と同じだ。とても美しい。自分の中にある心、精神も、この自然現象と同じだと直感的に思った。とたんに、とても懐かしい気がして、泣きそうになった。
【とても美しかった景色】
アヤワスカを飲んで、懐かしいものに触れた気がした。サンフランシスコ村と、ヤリーナコチャが懐かしい場所になった。
【ボートに乗って戻る】
リマへのバスターミナルがあるプカルパまで戻る。
ここ最近の大雨のため、道路が寸断、いつバスで戻れるか分からない。仕方なく、飛行機でリマまで戻った。
【飛行機でリマに戻る】
脱力感がひどく、気力体力が回復するまで数日かかったように思う。
最後に
アヤワスカのセレモニーでは、信頼のおけるシャーマンを探す事が非常に重要です。
シャーマンの中には、強烈な酩酊状態を利用し金品を奪おうとする者や、女性の体目当ての悪い輩もいるようなので注意が必要です。
おわり。
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この記事を書いた人 : タミオー / Tamioo 旅が人生。なるべくお金を節約し世界の隙間をふらふら生きる。読み手を選ぶ狂気の旅日記本「タミオー日記」の作者。旅マンガも描きます。 タミオー日記 : www.tamioonews.com 旅マンガ : インスタ tabi.koma で検索! ツイッター : @tamioonews |
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